秘密の地図を描こう
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予想通りと言っていいのだろうか。
『次に直接顔を合わせた時には、殴らせろ』
ムウのことを報告した瞬間、カガリの口から出たのはこんなセリフだった。
「……それは、勘弁して欲しいなぁ」
苦笑とともにムウはそう言い返す。
「ネオ、いじめちゃだめ!」
「……僕が代わりに殴られるから、さ」
「それなら、俺の方がいいだろう?」
彼の言葉を耳にしたのか。アウル達が口々にそう訴えた。
『悪いことをしたときにはお仕置きをされるものだろう? そいつは、私たちにお仕置きをされても仕方がないことをやらかしているんだよ』
笑いながらカガリがそう言い返す。
「……でも、ネオ、いじめないで……」
ステラが必死にそう告げる。
『いじめないって。一発で済ませる』
けりは入れない、とカガリはまじめな口調で告げた。
「ステラ……そこまでにしておけ」
ため息とともにムウが口を開く。
「カガリ嬢ちゃんの言うことも当然なんだよ」
怒られても仕方がないことを自分はしたのだ、と彼は苦笑を浮かべた。
「それに、怒られる方がいいって」
泣かれるよりもな、と彼はさらに言葉を重ねる。
「それこそ仕方がありませんわね」
ムウのことがそれだけ好きだったのだから、とラクスは言い返す。
「少なくとも、マリューさんに関してはきちんと責任をとっていただきませんと」
それとバルトフェルドに、と彼女は続けた。
「……わかっているって」
それに関しては弁解のしようもない。ムウはそう言い返してくる。
「それだけでも、俺の顔がまた変わりそうだよ」
しかし、それは甘んじて受けないといけないんだろうな……と彼はため息をつく。
「ネオ?」
「ステラにもいずれわかるよ」
それに関しては、と彼は苦笑とともに告げる。
「個人的には、わからないでいてくれた方がいいんだが……」
「無理ですわね」
「そうね。ステラは美人でいい子だもの」
いずれ、男の子達が取り合うようになるわ。マリューがそう言って優しい笑みを浮かべる。
「そうして、そこにいる人も振り回してしまいなさいな」
この言葉の意味がわからない、と言うようにステラは首をかしげて見せた。
「大丈夫よ。ちゃんと教えてあげるわ」
言葉とともにマリューは手を上げるとステラの髪を優しくなでる。その表情がマルキオの館でカリダが見せていたそれによく似ているような気がするのは錯覚ではないだろう。
「女性を悲しませた殿方はそれ相応の罰が下るものですのよ?」
覚えておきなさい、とラクスはアウルとスティングに向かって言う。
「それは、どんな偉い方だろうと例外はありませんわ」
さらにそう付け加える。
「……つまり、ネオはあんたやあの人達を悲しませたから、そいつに殴られるってことか?」
どうやら、三人の中で一番精神年齢が高いのだろう。スティングがこう質問をしてきた。
「そう言うことですわ」
よくできました、とラクスは微笑む。
『だから、一発だけで済ませてやるんだよ』
さらにカガリもそう言う。
『でなければ、しばらく使い物にならないくらいにたたきのめすんだが』
いかにも彼女らしいセリフではある。それがわかっているのか。ブリッジにいる者達は皆、苦笑を浮かべている。
「キラにはばれないようにしてくださいませね」
彼は、どこか、カガリにも夢を持っているようだから.ラクスは笑いながらそう告げる。
『わかっているって』
キラにだけは心配をかけないさ、と彼女は笑う。
「そうしてくださいませ。でないと、逃げられますわよ?」
キラをさらっていきたい人間はたくさんいる。せめて、居場所だけは特定できるようにしておかないと、とラクスは言い切る。
『そうだな』
話題がずれたことを感じたのか。ムウがどこかほっとしたようなため息をついたのがわかった。